アルバイト・派遣で働いていた理由

会社も自分も見極めたい。自分にあう会社・仕事なら正社員に

会社も自分も見極めたい。自分にあう会社・仕事なら正社員に

地元秋田で高校卒業後に専門学校で調理を学び上京。どうしても東京に行きたかったわけではなく、ずっと憧れていたイタリア料理店が東京にあったんです。そこに無事就職できることになり、上京しました。末っ子で可愛がられて育ったから親は反対でしたけど、「受かったら行かせてほしい」と言って。最終的には「行っておいで」と言ってくれましたね。
そのイタリア料理店で3年勤めました。憧れのお店ではあったんですけど、繁盛店なだけに忙しい。疲れてくると人って気遣いもできなくなるし、なんか周囲のみんなの嫌なところばかりが見えて来てしまって…。このままここにいると人間的に冷たい人になってしまいそう…と思って、それで辞めることにしたんです。
もともと私は接客が好きで、接客のための調理の知識を学びたくて学校にも通ったし、このお店にも就職したので、もう知識の習得は充分目標値に届いていると思いました。もちろん調理も好きなんですけど、やっぱりお客様の喜んだ顔を直接見られるのは接客ですから。かなり前から最後は接客と決めていました。
次の仕事を探す時はアルバイトで。そう思ったのは、やはり正社員で入社してあわなかった場合、会社にも迷惑が掛かりますし、その方がお互いハッピーだと思ったんです。アルバイトで入って頑張って、自分にあう会社だったら正社員になる。そのつもりで応募した次のイタリア料理店。そこでアルバイト面接で採用が決まったあとに電話が掛かって来て「やっぱり正社員ではないとダメらしい」と言われたんです。自分の意向とそれはあわないので丁重にお断りしました。そんな経験もしてしまいましたし、仕事をしていないわけにもいかないので、今度は派遣会社に登録することにしました。そこで派遣されたお店がシュクレイのお店だったんです。

なぜ、シュクレイで社員になろうと思ったか?

「渡邉さんは仕事もできるし、どこに行っても通用すると思う。
でもそれはシュクレイじゃないのかもしれない」

どこに行っても通用すると思う。でもそれはシュクレイじゃないのかもしれない

2019年の2月にコートクール ラゾーナ川崎プラザ店で派遣社員として働き始めました。6ヶ月後の8月にはもう正社員としてシュクレイで働きたいと思っていましたね。なぜそんなに明確に覚えているかというと、それには理由があるんです。
私は仕事となるとスイッチが入ってしまう性格。自分にも他人にも厳しいタイプでした。お店のスタッフとも、店長とも、仲が悪いわけではないのですが仕事上のことになるとイチイチ気になってしまう。そうなるとお店の空気は悪くなるし、店長は疲れてしまったんじゃないかと今では思います。
私は派遣時代、4人の店長のもとで働きました。新しい店長より自分の方がこのお店には長い。だから新しい店長が来て、店長がやってみたいことも全部自分が潰してしまっていたんだと思います。私としてはこれまでの経験でそれをやっても意味がないと当時なりに考えての発言だったんですけど。
そんなことが続いたので、店長が統括リーダーに話をして、統括リーダーと面談をしたのがその8月だったんです。
「渡邉さんは仕事もできるし、どこに行っても通用すると思う。でもそれはシュクレイじゃないのかもしれない」。統括リーダーのその言葉の意味は、「シュクレイの会社風土と私のスタンスがあっていない」という意味なのですが、私は最初まったくその意味がわかりませんでした。ただただ、はっきり言われたことが悔しかったんです。でもその時に、初めて経営理念手帳「こづち」を手渡されました。そしてシュクレイの社員はみんなこの経営理念手帳を実践して働いていて、それがシュクレイの会社風土を形成していることを話してくださいました。
120もの経営フィロソフィーはどれも簡単な言葉で簡潔にまとめられています。自分が今まで働いてきた中で、まったく頭の中になかった考え方…。もしかしたら私は前の職場で自分が嫌だったことをこのお店のみんなにしているのかもしれない…。明らかにこっちの考え方の方がこれから生きていく上で自分も気持ちがいいんじゃないか…。そんな様々な思いが頭をよぎり、決断へと導かれていきました。
「変わろう」。そこには、そうはっきりと決断した自分がいました。

「正社員になりたい」。
自分のモノサシではなく、会社やみんなのモノサシで判断してもらおう

「正社員になりたい」。自分のモノサシではなく、会社やみんなのモノサシで判断してもらおう

その次の日からは店長が「こうやってみよう」と言ったら、誰よりも率先して、まずはそれに全力で取り組む人になってみようと思いました。そう変わることで自分の内面もどう変わるのか知りたかったですし。それに、やりもしないで「できない」というのが私は嫌いなんです。ここで性格を変えられるかもしれない。自分のポテンシャルを信じよう。そう思いました。
経営理念手帳「こづち」には「自分が変わる」という項目があります。周りを変えたいなら、まずは自分が変わらなければいけない。我を通して周囲を否定するのではなく、自分が変わることで周囲を巻き込んでいける人になる。それを実践しようと思いました。
その矢先、店長が異動になってしまったんです。とても残念だったし心苦しかったのですが、私は新しい店長のもとでその徹底実践に入りました。
「正社員になりたい」。新しい環境のもと、店長をはじめ、スタッフにもそう伝えるようにしました。「シュクレイではない」と言われた自分がもし正社員になれたら、それは性格を変えられたことになる。つまり、自分のモノサシではなく、会社や周囲のみんなのモノサシで判断してもらおうと思ったんです。自分で「変わった」というのはカンタンですから。私が正社員になった時、それは私が私の性格を変えられた時です。

「シンカシートをやってみたら?」。ある日、社員のスタッフがそんな言葉を掛けてくださいました。シンカシートとは新卒社員が入社1年目に取り組むワークシートで、経営理念手帳「こづち」の項目から1項目を選び、それを1年間でどうやってクリアするかを宣言するシートです。すぐに店長や統括リーダーにその旨をお話しして取り組むことにしました。
私が宣言した項目は「あなたがいないと困ると思われる存在になる」。さらにその実現のために3つの目標を宣言しました。1つ目は「プラスの言葉を使う」。どんなに辛い時でも前向きなプラスの言葉を使い、常にスタッフの良いところをみつけて誉める。2つ目は「どんな事も自分事として捉える」。普段の仕事はもちろん、誰かが悩んでいる時やミスした時も自分事として捉え、いっしょになって改善策を考える。3つ目は「目標を立てたら宣言をする」。出来なかったらどうしよう、ではなく、目標を宣言することで意識を高め、自分を奮い立たせる。
実は統括リーダーと面談をしたあの8月の日の翌日から「1日一回、その日会ったスタッフ全員の良い所を誉める」ことを実践していました。仕事内容だけでなく、たとえばその日のメイクとか良い所を探して誉める。つまり、誉め上手になることを始めたんです。
そうすると、ずっと人を誉めることが苦手だったのに、人のいい所が見えるようになってきました。どんどん気づくようになって、店長やスタッフからも「誉め上手だよね!」と言われるようになり、「ああ、私変われるな」って。それにそう誉められて私自身嬉しかったんです。やっぱり人に誉められるのって嬉しいんだということを実感した瞬間でした。

社員登用試験

「渡邉さん、変わったね」

そうなるとお店の雰囲気も良くなりますよね。いつも前向きで誉めてくれる、認めてくれる人がいると若い子も「お店に行きたくない」とかなくなると思いますし。そういう人になりたいと思ってずっとやって来ました。
ある日店長から、マネージャーや統括リーダーとの話の中で「渡邉さん、変わったね」という話が出たよ、とお聴きしました。その時に正社員登用のお話をいただいたんです。
嬉しかったですし、「やれば、できるんだな」って思いました。でもその直後に新型コロナウイルスの流行があり、かなり時間が空きました。コロナで派遣スタッフを必要としない状況の中でも幸い私は残していただきましたが、今まで以上に頑張らなければいけない状況に自分を鼓舞しました。
その後、晴れてマネージャーの推薦をいただき、社員登用試験に臨んだんです。作文が苦手な私ですが、課題書籍である会長が書いた寿スピリッツグループの創業からの歴史が綴られている本を読み、心のままを作文にしたためました。本から学んだ、人として大事なこと。それから、自分のせいでお店の雰囲気が悪くなってしまったこと。強い思いで自分を変えてきたこと…。最後は私のようにシュクレイの考え方や風土のファンになる人が増えたら嬉しいという文章で結びました。
面接でも同じように正社員になりたい理由を話したのですが、社長の返事が返って来なかったんです。何かいけないことを言ってしまったのかも…、と思っていたら、「いや、感動して言葉を忘れていました」と言って下さって。とても嬉しかったです。

お客様が振り返って会釈をしてくれるような接客をしたい

社員になって変わったこと / これからの抱負

お客様が振り返って会釈をしてくれるような接客をしたい

念願の正社員になれて仕事上で変わったことは、派遣の時以上に踏み込める楽しさです。ディスプレーや販促物の発注など、派遣の時から自分も「こういうことをやってみたい」を発信したかったので。もちろん派遣やアルバイトでも言っていいんですけど、当時そこは少し躊躇していました。そのほかは、もともと社員のつもりで働いていたので仕事内容は変わりません。
あえて挙げるなら、派遣の時以上に責任感が強くなったことかもしれません。自分の行動、自分の考えがお客様やお客様の先の方にまでつながっていることを強く意識するようになりました。お客様からお客様の大切な人に私たちのお菓子が手渡される瞬間、食べた時の思い出、そういったものを私たちは背負っているということです。それは私たちの存在意義でもあります。そしてそこを本気で考えることで売上も変わってくるということです。

そうですね、生活面で変わったことは心に余裕ができたことですかね。人のいい所が見えるようになって、悪口とか全然言わなくなりましたし、人にやさしくできるようになった気がします。6年つきあってきた彼氏にも「変わった」って言われます。「怒りの沸点が前と違う」って(笑)。
たぶん、仕事でも生活でも圧倒的に前向きになれたんだと思うんです。考え方が変わって、新しい考え方に自信が持てるからなんでしょうね。経営理念手帳「こづち」をベースに実践をして、返って来るものを受け止めているうちに自信がついた。そういうことなんではないかと思います。

今後の抱負は、いま副店長なので、次は「店長になりたい」です。この目標もみんなの前で宣言していて、ずっと言い続けています。店舗を任せていただいて、自分の手で理想のお店を実現したい。
スタッフには、仕事に来て楽しいと思ってもらえるお店。仕事に対して嫌だという気持ちには絶対させたくないんです。
お客様には、レジでお会計が終わったあとに(お客様が)振り返って会釈をしてくれるような接客をしたい。それって、すごく丁寧に接客しないとそうはならないんです。ヒヤリングして、一生懸命いっしょに考えて、お客様がご納得されてご購入いただいた時とか。そういうシーンがすごく多いお店にしたいって、ずっと思っているんです。こづちの漢字でいうと、「咲顔(えがお)」ばっかりのお店にしたいんですよね。「咲顔」は私が一番大事にしていることですから。